DOR150号記念公開シンポジウム報告要旨 
DORから見る北海道経済の動向 
北海学園大学経済学部教授 大貝健二氏

 8月2日、DOR150号記念公開シンポジウムが開催されました(8月15日号既報)。本号では、北海学園大学経済学部教授・大貝健二氏の報告要旨を紹介します。

 私は、北海道同友会が実施している景況調査(北海道DOR)の分析および報告書の執筆に2012年から携わっています。DOR150号記念公開シンポジウムでは、北海道同友会が行っている景況調査のデータを中心に、限られた時間ではありますが、以下の点を報告します。

北海道DORの回答数・属性

 第1に、北海道DORの回答数や属性に関してです。北海道DORのサンプルは、中同協DOR回答対象企業と北海道同友会が独自に集計する調査対象企業400社程度。毎期の回答数は200社弱と決して多くはなく、いかに回答数を増やすかが課題となっています。北海道DOR回答企業の業種を見ると、流通商業による回答が多いです。中同協DORと比較すると、建設業の割合が相対的に高いことも確認でき、その分、製造業やサービス業の割合が低いです。

 規模別、地域別では、小規模企業のウェイトが高いこと、札幌・小樽圏が4割を占めるなど偏りがあり、数字を見る上で注意が必要です。

景況調査の動向

 第2に、景況調査の動向を見ると、2024年第2期の主要指標DI(前年同期比)は軒並み大幅な改善を示しましたが、実感がないというのが実情です。考えられる理由としては、業況判断や売上高といったDIは前年同期比で見ていることがあります。つまり、2023年4~6月期は仕入単価の高騰により、大きく景況感が後退した時期であり、あくまでその時期と比べて改善したとするならば説明はつきます。調査時期の足元の景況感を見る業況水準は、改善したとはいえ水面下推移であることからも、そう考える方がいいのかもしれません。

 その他、コロナ禍以降、「採算の水準」に見られた周期性が見られなくなったこと、仕入単価DIが高止まりしていることに加え、人手不足DIが建設業において大きく悪化していること、函館など道南地域において資金繰りが悪化しているなど、景況感の不透明さに加え、業種別、地域別課題も表れています。(図)

政策委員会での分析会議

 第3に、北海道同友会では、政策委員会において景況感の推移と実際の地域の経済動向を擦り合わせる分析会議を実施しています。その場において、昨年度から出てきている意見としては、(1)ラピダス進出が国費を投じて進められている中で、労働力の確保などにおいて影響があること、(2)景況調査に直接的には出てきませんが、コロナ禍後から、中小企業の経営環境が改善しない中でM&Aに関する話が相次いでおり、M&Aと同時に同友会を退会するというケースも見られていることです。また、人手の確保について、大手企業の採用活動超早期化に対して、中小企業団体としていかに対応していくかといった議論もなされています。

 いずれにせよ、景況調査は中小企業の経営環境の変化を反映している側面もあります。景況調査を根拠に、いかに自治体などと連携して政策支援につなげるかも求められています。

「中小企業家しんぶん」 2024年 9月 15日号より