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シリーズ「どうなる金融〜不良債権最終処理」
「中小企業家しんぶん」2002年9月5日号より

シリーズ1

金融機関を選べない

京都北部5信金合併 (上)


シリーズの開始に当たって
 4月12日に金融庁が出した「より強固な金融システムの構築に向けた施策」に「地域金融機関の合併促進」が盛り込まれ、地域金融機関の健全性確保と収益性の向上に向けて指導していく方針を打ち出しています。

 1990年に454あった信用金庫は今年3月には349、ここ5年間で61の信金が再編されています。

 合併し規模が大きくなることは、金融機関や地元経済にとって積極的な意味があるのでしょうか。
 現実は不良債権処理とともに進められ、総合的には貸出部分の圧縮となり、地元の不安をあおるものとなっています。店舗数や職員数の減少により、地域金融機関の強みとしてきた細やかなリレーションシップ融資(長期的な信頼関係にもとづいた融資)ができず、再編の混乱に地銀や都市銀行に顧客を譲る結果を招いている例も少なくありません。

 すでに信金の主要勘定(2002年3月末)では、全国の信金の預貸率は62・2%で前年対比マイナス1・5と、他の金融機関と同様に年々預貸率が下がる傾向にあります。

 このシリーズは、地方型再編で京都北部の5信金合併、都市型再編として東京都内の王子信金をはじめとする4信金合併を取り上げる中で、その実際を見ていきます。

(中同協事務局 平田美穂)

信金王国の崩壊
 「信金王国」とされてきた京都では、1995年までは11の信用金庫がありました。しかし、96年北部3信金と1信組が合併し京都北都信金に、99年に京都みやこ信金、南京都信金が破綻し、京都中央信金に事業譲渡され、現在7信金となっています。

 ところが今年1月24日、北部の5信金の合併が発表され、今年11月には京都北都信金となり、府下は3信金、1地銀に大きく再編されていきます。

新規融資に不安
 4月に京都同友会が行った「北部5信金合併・金融問題緊急調査」(北部会員企業180社対象、回答率27・2%))では、いずれの企業も信金との取引を行っており、合併に当たっての不安(右図参照)では「新規融資の実行」46・9%、「融資の継続」32・7%、「店舗の廃止」30・6%、「担当者の削減」22・4%などとなっています。

 現在合計した店舗数は78ですが、合併時には65店、職員数も3年間で1255人の2割減を打ち出しています。

信金から他の金融機関へのシフト
 今後の取引は75%が継続の意志をもっているものの、8・2%が検討中としています。地元有力地銀が積極的に営業をかけているという実態があり、信金の地域性が薄らいでいく中で、「身近な信金さんだから」と取引していた企業が「ガタガタしている信金より地銀の方がいい」と、離れていく傾向も否めません。

 7月17日に京都同友会北部地域協議会が開いた「5信金合併問題懇談会」では、ペイオフ対策でいくつかの信金に分散していた定期性預金は、まとめられることになり、他行への預金シフトが始まること、これまで信金間である程度競争があったが、企業としても金融機関を選べなくなり、寡占化で、サービスの低下が進むことが危ぐされていました。

薄らぐ地域性
 地方都市の場合、職住接近で信金の役職員が当該地域の出身者である場合が多く、地元企業の経営者や職員のようすを細やかに把握していることが、信金のリレーションシップ融資に大きな役割を果たしてきました。

 今回の合併では、移動を拒否する社員は「地域限定社員」として給与が下がることになっています。
 また、店舗数の減少で、得意先が遠く離れた所になった場合は、必要な情報を得るために担当者が「じっくり話し込むという時間はなくなってくる」と現場の職員は話しています。

(つづく)

調査 資料 対話 シリーズ「どうする政策金融Q&A」 シリーズ「どうなる金融〜不良債権最終処理」 シリーズ「どうなる金融〜信金再編の余波」 シリーズ「金融機関とともに地域を考える」 シリーズ「金融機関とともに東京同友会と東信協・保証協会」

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