講演録

ヨーロッパ中小企業憲章とEUの中小企業政策

中小企業の定義と存在状況

250人未満が「中小企業」

 ヨーロッパでは、中小企業を次のように定義しています。

 1996年に欧州委員会の公式決定という形で行われたものですが、「従業員数250人未満、年間売上額4000万ユーロ以下または年次バランスシート(総資産額)2700万ユーロ以下で、他の1つないし複数の大企業に資本または経営権の25%以上を保有されていない企業」と定義されています。

 ヨーロッパでは、以前は従業員数で500人以下という定義を一般的に使っていました。それを250人未満に下げたのは、各国が共通して使うのだから、厳密な定義にして、ほとんどの企業が中小企業の中に入ってしまうような定義にはならないようにしたのです。たまたま、日本の中小企業基本法の定義である300人以下に近い数字になっています。

 もう1つ注目されるのは、大企業の子会社は入れないと定義していることです。日本の定義にはない規定です。ただし、この定義は2004年中に改訂される予定です。新しい加盟国を迎えて、スタンダードをどうするかを検討するようです。

中小企業が増えているヨーロッパ

 1998年の数字ですが、ヨーロッパの中小企業の状況を概観しますと、EU15カ国(当時)に中小企業総数で1933万社、従業者総数が7455万人、その93%は従業員数十人未満のマイクロ企業です。日本では廃業率が開業率を上回り、企業数が減っていますが、ヨーロッパでは企業数、従業者数が拡大(開業率11%、廃業率9%)しています。

 ちなみに、このような調査を行っている総元締めは、EIMオランダ中小企業・経済研究所というところです。この研究所は、元は国立で、現在は民営化されていますが、欧州規模の『ヨーロッパ中小企業白書』など編集刊行をするヨーロッパ中小企業調査研究ネットワークの要となっています。

 オランダのような小さな国で、100名を超える研究スタッフを抱える中小企業専門の調査研究機関が存在するのは、すごいことだと思います。

(つづく)

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