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シリーズ「どうなる金融〜不良債権最終処理」
「中小企業家しんぶん」2002年2月5日号より

シリーズ6

地域に不可欠なコミュニティ銀行

オーバーバンキング論 今宮謙二中央大学名誉教授に聞く(2)


 前回、都市銀行のグループ化で国際投機取引に向けた大きな再編の流れがあることにふれ、地域経済の活性化に逆行する、オーバーバンキング論(銀行の過剰状態、金融機関の数が多すぎて、適正な利ざやが得られないというもの)の矛盾について、今宮中央大学名誉教授へのインタビュー前編を紹介しました。

 現実的に国内では、大分で昨年11、12月にかけて8信金のうち4信金が破たん、京都では先月末北部地域の5信金が1つに合併する方向を打ち出すなど、信金・信組ベースの再編は日常的なことになっています。

 後半のインタビューではアメリカの金融の歴史に触れ、国際金融を動かす大手金融機関に対峙(たいじ)し、グローバリズムに抗して、国内で大きな力を持つコミュニティ銀行を紹介します。

 

 「地域経済を発展させる」との理念を持ち、多くの市民に支持されアメリカの地域経済で圧倒的に力を持つのが、「コミュニティ銀行」です。

銀行と証券の分離から自由化への流れ

 アメリカは1929年の大恐慌以前は、バブルの時期があり、金融機関ではインサイダーや闇金融などが横行していました。その教訓から銀行の取引を厳しく規制する「グラス・スティーガル法」が33年に誕生。銀行と証券会社を区分し、預金保険公社が銀行を管理するようになりました。しかし第2次大戦後、アメリカの国際経済への支配が強まり、80年には金融制度改革法が成立。金融の自由化、証券化の流れの中で、銀行持ち株会社による業務が拡大。86年までに全面的に金利は自由化されました。

急速に進んだ再編

 しかし、80年代に銀行の破綻が急増。公的資金950億ドル(10兆円)が投入され、整理信託公社(RTC、日本の整理回収機構はこれをモデルにしたもの)が整理にあたりました。80年代半ばに1万4000行ほどあった銀行も99年には8500行ほどに再編されています。

 99年には「グラム・リーチ・ブライリー法(金融サービス近代化法)」が成立し、銀行と証券の垣根が取り払われました。

 銀行の貸出よりも、有価証券市場によって調達する方が容易になり、住宅ローンも、証券化され、投機の対象になっています。

 国際金融を動かしている大銀行は、資金運用をより優位に進めるためIT投資に傾注、グループ化し、さらに巨大化しています。

地域支えるコミュニティ銀行

 ところが実際のアメリカ経済を支えているのは、「コミュニティ銀行」です。77年にCRA(地域再投資法)ができましたが、それを現実のものにしていったのは、地域の銀行や市民グループ、そして企業家です。

 コミュニティ銀行は、グローバリズムに反対し、地域経済を発展させていくという誇りを持った銀行です。99年時点では8580行中、資産規模10億ドル以下の銀行が8186行、95%以上が中小銀行です。

 地場産業に貢献し、文化を発展させる。人権を尊重し、地球環境保全もテーマに掲げる。総じて「人間生活の向上につながる」業務の展開、草の根民主主義を地域ぐるみで支えるその基盤を担っています。

 金融再編は今も進んでいますが、大銀行とは役割が違う。クリントン大統領は97年の一般教書演説で「コミュニティを支援し、事業体の投資と銀行の貸出によって雇用を創出させねばならない」としています。州によっては支店設置規制などがあり、コミュニティ銀行を保護し、育成する政策もとられています。

景気回復と銀行機能回復で不良債権処理

 巨額な不良債権があるために日本は長期的不況におちいっているかのような論調の中で、不良債権処理が強引に進められています。バブル時の不良債権処理はほとんど終わっていますが、今ある不良債権はこの長期不況が作ってきたものです。

 不良債権処理を本格的におこなうには、まず景気回復策が必要です。そして、不良債権処理を側面から援助するため、銀行による金融仲介機能=貸出機能を早急に回復させる必要があると思っています。

 それは、(1)全面的な情報公開(不良債権の実態、貸倒引当金などの内容、債権放棄の実情、保有する株式や土地などの資金内容など)、(2)経営についての透明性の確保(融資条件の公開、とくに、中小企業などへの貸出条件の公開、資産運用の公開など)、(3)健全な経営のための透明な人事管理と民主的労働組合の確立、(4)労働条件の公開です。

 アメリカのコミュニティ銀行の例にもあるように、銀行は国民に奉仕し、預金者保護、信用秩序を守り、適切な資金を配分して地域の中小企業、商店などと密接な関係を保ってこそ信頼が得られるものです。

 同友会が今、制定に向けて取り組んでいる「金融アセスメント法」は、本来の金融機関の役割を取り戻させるためにも、重要なポイントになります。

(つづく)

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