中小企業憲章と私

人類と自然に新しい生命力を

中同協中小企業憲章学習運動推進本部 本部長代行
大橋 正義氏 ((株)大橋製作所社長)


 人間の歴史とは何か。始まりは、自分と自分を取り巻く自然環境の認識。そして、生きるために人間社会をつくり、共同して環境に働きかける力と知恵を身につけ、自然と共生し、あるいは闘いながら、時には人間同士が争いつつ、人間が「生存できる環境」をつくり、その進化を歩んできました。

 いわば人間の歴史は、客観的な制約条件を克服する過程で「科学・技術・文化」、すなわち「生きるためのさまざまな糧」をつくり続けた歴史ともいえます。

 国際社会では、国家や企業や人間の行きすぎた行為に対する「環境・安全・社会的責任」を重視する法規制の強化など、「新しい価値観」にもとづく経済社会を求める声が強まっています。日本では、このような分野の法規制は弱い。「石綿」問題、耐震強度偽装事件、ライブドア事件など、湯水のように問題が発生し、国は後追い対策に追われています。

 世の中で起きている問題を、自社の問題としてとらえたらどのようになるだろうか。

 弊社は、アジア・北米・EUなど、製品市場の国際化にともなって、企業の社会的責任の領域も広がり、市場・顧客への品質やサービスなどのバックヤードの充実が不可欠になっています。すなわち「環境・安全・社会的責任」問題を、自社の経営の品質(品格)問題と位置づけるということです。その基本は、「安全・命・環境・顧客利益・構成員の生活」に対する共同の社会的責任をどのように果たすかにあります。

 「部品不良」「意思決定不良」とはどのような意味をもつのだろうか。良い製品とはどのようなものだろうか。それは、社会へどのような価値をもたらすものなのか。このようなことを明らかにし、一人ひとりの自覚的な共通認識にする必要があります。

 私たちが製造している部品・機械・製品は、国内外のあらゆる場面で多くの人が使用しています。1つの部品不良や意思決定不良はなにをもたらすか、起こるべき事態を想定すれば、場合によっては機械が暴走したり、汚染物質が川に流れ出たりするなど、人の生死や企業の存続さらに資源・自然環境を左右する危険をはらんでいるということです。

 その意味で1つの部品不良や意思決定不良は、あらゆる人々の生活に対する責任、環境・資源に対する責任、生命や安全に対する責任などを内在しているということです。

 私の「憲章」実践の身近な目標は、良いものづくりとは何か、良い製品とは何か、良い意思決定とは何か、これらの答えを日常の経営の具体的な現場の事例・実践の中で導き出し、全員が誇りをもって内外の顧客に「最高の付加価値をもたらす信頼性の高い製品」を提供できる「新しい」企業になることなのです。

 中小企業憲章制定運動とは、国民、自然、地域、中小企業、経済、社会、文化、スポーツ、余暇など、人間や自然のさまざまなカテゴリーの世界に、新しい価値観にもとづいて「新たな生存環境」をつくり、新たな生命力と活力をもたらすものなのです。

 持続可能社会を実現する。それは、将来に向かって人間一人ひとりが誇りと希望をもって生きる道筋と根拠を明らかにすることです。

「中小企業家しんぶん」 2006年 3月 15日号から

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