中小企業憲章と私

若者の力なしに経済成長の持続はない

愛知同友会会長 山本 栄男((株)サカエ社長)


 「国民総中流時代」と言われた時代は、お互いが認め合って生活してきましたが、現在、「相手のことはどうでも良い。自分さえ良ければいい」など、身勝手な行動がマスコミ報道で数多く見受けられます。

 また個々の顔が希薄になっている時代です。人としての人間の生き方よりも、大きな金の流れの中で上手に金を集めることを選び、一生懸命に生きようとする人が、水面下に沈んで消えていくように感じます。

 そして、このままではもっと大変な時代になってしまいます。それは、2005年になってついに年間出生数106万人、死亡数108万人と、人口が自然減に転じたことです。当然、労働力人口も減少します。歴史の中では、人口が減少した国において経済成長を持続させたことはないそうです。

 日本が経済成長を持続させようとした時、若い労働力なしに技術革新と生産性向上を続けることが可能でしょうか。

 大企業は安価な労働力を求めて海外に進出する一方で、若者の大企業志向は変わりません。外国から安い労働力を入れて、ものづくりをいつまでも続けることはできません。

 同じ苦しみをヨーロッパは味わい、生まれたのがEU小企業憲章であり、小企業は「ヨーロッパ経済の背骨である」「雇用の主要な源泉である」「ビジネス・アイデアを産み育てる源泉である」という理念を掲げています。

 小企業最優先の経済政策が各国で政策の中心に据えられてこそ、「新しい経済の到来を告げようとするヨーロッパの努力は実を結ぶだろう」と書かれています。

 わが国では中小企業が全企業数の99%を占め、勤労人口6000万人の内約8割の4800万人が働いており、事実として地域や国を支えているのは、私たち中小企業です。

 日本にもEUのような理念が必要です。それが中小企業憲章です。その旗印の下、私たちが心から中小企業家であることに誇りを持ち、社員、そして子どもたちに地域で働くことの大切さを教え、共に地域を活性させていくことを願ってやみません。

「中小企業家しんぶん」 2007年 8月 15日号から

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