中小企業憲章と私

「地域の主権者」の自覚を持って

中同協社員教育委員長 本郷 利武((株)ユタカ商会社長/北海道)


 あらためてヨーロッパ小企業憲章(中同協翻訳)を読みました。基本理念を謳(うた)っている前文は、読む度に新鮮さを感じます。私はこの原稿執筆の機会に、中小企業憲章を確かな現実のものとしていくために、何が必要かを考えてみました。

 ヨーロッパ諸国と違って日本では、残念ながら自治意識が希薄です。その意味で、中小企業憲章制定運動で大切なのは、主権者としての自覚を醸成することができるか、だと考えます。そのためには、憲章の制定を念頭に置きつつ、各自治体で中小企業振興基本条例を制定することが必要です。条例を制定する過程で、地域のことは地域の主権者が自ら発言し、責任をもって決めていくという主権者の自覚が生まれてきます。

 過日、北海道同友会南しれとこ支部別海地区会の発会式に参加しました(2007年12月5日付既報)。その席で、同友会会員の熱心な提案を受けとめ、別海町長は条例設定の約束をしました。

 帯広市では、1979年の条例を廃止し、2007年4月1日から基本条例が施行され、同年7月20日から振興協議会設置要綱が施行されました。

 札幌市では、1975年の条例を全部改正し、2008年4月1日から振興条例が施行されます。政令都市第1号です。この条例の前文は力作です。

 函館市では、市長が基本条例制定に取り組む考えを市議会で示しています。

 多くの自治体は、財政再生団体に陥ることに危機感をもっています。その回避のためにも、財政基盤を確立する必要に迫られています。一方、人間の命と幸せにかかわる教育・医療・福祉を地域で支えるために、地域の生活者でもある私たち企業家がかかわる必要があります。

 全国の自治体で基本条例が制定され、その条例を政策として実行していくための振興協議会が設置されていく状況を想像してみてください。

 その時、憲章制定運動は5合目の地点に立つと考えます。なぜなら、ヨーロッパ小企業憲章の前文は「新しい経済」を掲げ、EUの目標は「競争的でダイナミックな知識に基礎を置いた経済」と認識されているからです。

 私たちの努力が実を結ぼうとしている姿、それを基本条例制定運動の過程で構築していく必要を感じています。

「中小企業家しんぶん」 2008年 1月 15日号から

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