<< 中同協・各地の活動の目次に戻る印刷用画面 >>

【06.03.08】中小企業が日本経済の背骨となる理念を作ろう【北海道】

北海道同友会の「中小企業憲章」
「中小企業振興基本条例」制定の取り組みより

 中同協では、中小企業を「ヨーロッパ経済の背骨」と位置づけるEU「欧州小企業憲章」に学びながら、中小企業が主役となって日本経済を再生していこうと、「中小企業憲章」と中小企業振興基本条例制定運動を展開。北海道同友会では、道経済部との懇談会を開いたり、帯広支部で振興条例制定のプロジェクトが発足。南しれとこ支部でも振興条例制定への学習会が町、商工会と合同で始まっています。道経済部との懇談会と、帯広支部の取り組みを、「中小企業家しんぶん・北海道版」2月25日付から紹介します。




道経済と中小企業を元気に
北海道同友会が北海道経済部と懇談

 北海道同友会は1月30日、「北海道経済の活性化と中小企業の振興」をテーマに、北海道経済部との懇談会をホテルポールスター札幌で開きました。


 北海道経済部からは、近藤光雄経済部長、赤岡洋経済部次長、内田幹秀商工局長、立花謙二経済政策室参事をはじめ、各担当課長ら総勢8名が出席。同友会からは、三神代表理事、守代表理事、木野口政策委員長、土屋札幌支部長など総勢11名が出席し、木野口政策委員長が司会を務めました。


協働関係を強めよう


 最初に、三神代表理事が「北海道経済の活性化と中小企業の発展のために、ざっくばらんに意見交換をし、相互のコミュニケーションを深め、協働関係を強めていきたい」とあいさつ。


 近藤経済部長は「昨年の3月まで十勝支庁長をやっており、同友会帯広支部の皆さんに大変お世話になった。道財政の再建と産業の振興を両立させるために、食と観光、IT・バイオそしてものづくりに力を入れている。中小企業は道内の企業数の99%以上を占め、雇用の85%を担っている。中小企業が元気にならないと北海道はよくならない。情報交換を通して協働できるところは大いに協働していきたい」とあいさつ。出席者の紹介では、「同友会担当課長です」との発言も飛び出し、会場は共感の笑いに包まれました。


 その後、立花参事が「平成18年度経済部重点施策」について、特に北海道の潜在力や優位性を生かして経済再建を加速させる「加速連携事業」(「食」の北海道ブランド、「観光」の北海道ブランド、知的資源を活用した新産業・新事業おこしの3つを重点に全庁をあげて横断的に積極的に推進する事業)について詳しく説明。


 守代表理事は「北海道経済と中小企業を元気にするために」との提言を説明。


 守代表理事は、中小企業と地域に希望を与える金融施策、大型店の出店規制と地域商業の振興、地域に波及効果の大きい地域密着型公共事業、道外・海外市場開拓などに取り組む中小企業への長期的支援、中小企業振興基本条例の制定と産業振興会議(仮称)の設置について提言しました。


オール北海道での取り組みに力を


 提言を受けて、担当課長から「担保や第三者保証に依存しない大胆な融資制度を考えている」「大型店の出店や撤退のあり方を検討していきたい」「東京に広域専門員を配置し、首都圏の企業と道内企業を結びつけるきめ細かなサポートに力を入れている」「中小企業の声を聞いて、新しい条例のあり方を検討したい」など、コメントがありました。


 続いて経営者から、業界の現状や提言など、忌憚(きたん)のない意見が出されました。


 「道、市、金融機関、農業団体などが一体となったオール北海道での取り組みを」「室蘭でのPCB汚染処理事業に道内の中小企業がかかわれるよう積極的な配慮を望みたい」「地元建設業は除雪など市民の安全、安心の確保に貢献している。他分野へ進出するにしても販路の確保など3〜5年はかかり、長い目での支援が求められる」「道内の1次産品の販路拡大のためには、身内が本当にその気になることが大切。『北海道を愛している企業』というシールでも作ってはどうか。ホクレンや商社などの協力も必要」「新製品を出して、顧客の声を聞いて、改良して、やっと売れるようになるまでに数年かかる。開発から販売までの長期的支援を」「もの作りに取り組む卸業も利用できる長期の制度融資を」など。


 最後に「オール北海道の取り組みに力を入れたい」と近藤部長。「支庁戦略会議懇談会には同友会の各支部も参加できるよう声をかけてほしい」と三神代表理事。中身の濃い2時間となりました。




行政まき込み地域振興に熱い論議
「中小企業振興基本条例プロジェクト」が発足
【帯広支部】

 帯広支部(会員数642名、対企業組織率約10%)では、2003年から、落合支部長((株)テキサス社長)、曽根副支部長((株)ネクサス社長)、岩橋幹事長((株)ホクコー社長)が、全国総会や全国研究集会の中小企業憲章分科会に参加し、「中小企業が日本経済の背骨となる理念を作る活動」に刺激を受け、学習を重ねてきました。


 昨年、帯広で開いた全道経営者“共育”研究集会(「道研」)では、東京都墨田区の高野課長を分科会講師に招き、「中小企業振興基本条例」についてじっくりと学ぶことができました。


「金融アセス」制定運動から得たもの


 帯広支部の2004年度、2005年度のスローガンは、「地域に根ざせ中小企業家同友会」。「地域」が生き生きとしてこそ、中小企業の活力が生まれるとの考えからです。


 その根底には、4年前に取り組んだ金融アセスメント法制定運動がありました。当初、「力のない企業は、金融機関が相手にしなくても仕方がない」「経営が厳しくなった会社を金融機関が助けるとライバルが増える」「金融機関との共存、共栄は絵にかいた餅」などの意見がありました。しかし、討論を重ね「金融機関の援助がないままに倒産が増えれば失業者が増え、消費が減退し、地域が疲弊する。地域にとっては、企業が競争しながらも、地域企業全体が経営体質を強化していくことが必要」との結論を出して、2万筆を超える署名を集めました。


 また金融機関との金融懇談会は、現在も各金融機関の支店長が代わるたびに定期的に行われています。今回のプロジェクト発足も、「地域」を活性化させ、会社・社員の生活を豊かにしていくのは中小企業経営者の役割という強い決意の表れでもあります。


自社と地域のつながりを問い返し


 1月13日、落合支部長をはじめ、帯広支部の頭脳とも言えるメンバー9名が集まり、渡辺社長(東洋農機(株))を委員長に選出し、落合支部長を除く8名でプロジェクトチームを発足させました。冒頭、岩橋幹事長が発足の目的を説明、渡辺委員長は今後の運動の進め方や論議の持ち方について提案。


 基本的な考え方として、(1)中小企業振興が、帯広市の地域振興につながるように考えること、(2)プロジェクトや支部役員内で帯広市における中小企業振興には何が必要かを、「自力本願」のスタンスで徹底的に論議する、(3)帯広商工会議所など、他団体にも呼びかけながら、全市的な論議を巻き起こしていくという3点を申し合わせました。


 条例制定の論議は「自社と地域とのつながりを問い返すこと」、そのような思いが各メンバーの胸に刻まれました。早速、各委員は、商工会議所への打診、市役所へのアプローチ、中小企業問題全国研究集会での八尾市の分科会参加と役割を分担し、活動を開始しました。


 1月26日の帯広支部新年交礼会では、駒澤大学の吉田敬一教授から、中小企業憲章や企業経営の改革について話をききました。引き続き開いた吉田氏とプロジェクトメンバーとの懇談会では、各地の事例から「中小企業振興と地域について情熱的にかかわる市役所の職員と連携して運動を進めることが大切」とのアドバイスが吉田氏からありました。基本条例を実効性あるものにするためには不可欠な要素、とのことです。


 今後は定期的に会合を持ちながら、地域振興のコンセプトを練り上げていきます。十勝の春は、行政を巻き込みながら、地域振興について熱い論議が巻き起こりそうです。


<< 中同協・各地の活動の目次に戻る印刷用画面 >>

同友ネットに戻る