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【06.04.15】私たちの手で元気な企業と活力ある地域を!

県中小企業振興基本条例を実効あるものに【埼玉同友会総会記念パネル討論】

 埼玉同友会では、4月15日の第33回定時総会で「今、革新の時。私たちの手で元気な企業と活力ある地域を!」をテーマに、記念パネルディスカッションを行いました。全国に先駆けて中小企業振興基本条例(2002年12月制定)を制定した埼玉県をさらに元気にするために、行政、議会、企業家それぞ れの立場から熱い議論が交わされました。その要旨を紹介します。

【企業家から】中小企業の役割を正当に評価する価値観の形成を

(株)ハーヴィインターナショナル社長 切山 英彦氏
 わが社は、食品の嗜好(しこう)にかかわる調味料の製造という非常にニッチな業種です。食品業界は戦後の食糧難の時代から飽食・美食の時代へと激変し、わが国は今や食料自給率40%と、世界一の食料輸入大国となりました。日本の食料政策を真剣に考えなければならない時期がきています。

 自社の直面する経営課題として、若い人材の採用があります。学生や大学の大企業優先の求職志向を強く感じます。経営者自身の魅力ある企業作りの努力は必要ですが、中小企業が地域に果たしている役割を正当に評価する国民的な価値観の形成こそ重要です。

 これは、われわれが進めている中小企業憲章の目指すところです。各自治体レベルの憲章とも言うべき、振興基本条例を実効あるものとするために、埼玉同友会では2006年度県への政策要望で、振興基本条例を具体化する場として「中小企業活性化会議」(仮称)を提唱しています。この会議には、産学官に 県民を加えることで、条例の県民への浸透も図る必要があると考えています。

(埼玉同友会相談役、中小企業憲章推進担当理事)

【企業家から】淘汰される地元業者、新事業支援セミナーを立ち上げる

(株)エフ広芸 社長 藤井 忠行氏

 わが社は越谷市で看板業を営んでおります。残念ながら越谷市の商店街は、大手チェーン展開の大型店の進出により、シャッター化が進んでいます。彼らが立てる大きな看板は、地元業者への見積もりの依頼さえなく、地元看板業者は近年大幅に受注が減って来ているのが現状です。地元中小企業は大手流通資本に淘汰され、越谷市の商工会を例に取りますと、ピーク時約6700社の会員が、現在は約5700社に減少しています。人口は当時よりも5万人も増えているにもかかわらずです。

 こうした中、昨年、同友会のメンバーが彩東ベンチャー支援センターというNPO法人を立ち上げ、今年は地元の商工会、商工会議所とともに中小企業新事業活動促進法のセミナーを開催することになっています。われわれ中小企業家が経営指針づくりに取り組み、強じんな経営体質を目指すことが地域の活性化につながると考えたからです。県の東部産業労働センターも、バックアップの意向を示して下さっております。

(埼玉同友会副代表理事)

【議会から】条例の精神を県民に広めよう

埼玉県議会議員、「中小企業・農林業を支援する」議員連盟幹事長 奥ノ木 信夫氏

 条例制定の背景には、2000年、2001年のデフレ不況がありました。不動産の下落、金融機関の倒産という未曾有(みぞう)の経験に加え、公共事業の削減、厳しい金融検査マニュアルの下での貸し渋り・貸しはがしが行われる中、われわれ埼玉県議会94人の議員が超党派で議員連盟を立ち上げ、全会一致で条例制定となりました。金融・公共事業・商業と部会に分かれて議員自らが学び合いました。現在は、農林業も含め「中小企業・農林業を支援する」議員連盟に発展していますが、これは埼玉県における農林業の重要性を重くとらえた結果です。

 しかし条例を制定しても、その内容を県民の皆さんが理解しないと活力ある地域づくりは進みません。日本の経済は中小企業が支えているということ、県も発注にあたっては地元優先を貫くこと、地産地消、県産品愛用、共存共栄を県民ぐるみで考え、実行していくことが必要です。同友会が提言している中小企業活性化会議は、大賛成です。新井代表理事からも要望の声を聞いております。また埼玉県議会では、信用保証協会の保証料率改定の問題についても、3月の定例会で真っ先に反対の決議を上げました。これも当然のことです。これからも皆さんの生の声を、県と地元の県議に提言して頂きたいと思います。

【行政から】創業支援、産学連携、企業誘致を3本柱として

 総会議案の中で、「中小企業施策・制度の活用」の項目の中に「中小企業新事業活動促進法に積極的に取り組み、経営指針づくり運動に発展させていきましょう」とありましたが、これは県が積極的に取り組んでいる事業でもあります。

 促進法の中の経営革新計画の承認では、昨年同友会で泊りがけの学習が行われ、大きな成果を上げていただきました。その結果、藤井社長のお話のように、各地域において同友会と一緒に勉強しながら経営革新計画の承認を目指して行こうという動きも具体的に出てきています。県としても承認企業に対してさまざまな施策を用意しています。製品の展示会や開発に関する費用を一部負担する制度や、ベンチャー企業優良製品コンテストを行い、同友会からも5社受賞されました。コンテストのねらいは、県から選ばれたということで、販路拡大・営業に活用していただくことです。そして県自らも積極的に製品を購入しています。

 埼玉県では、創業支援・産学連携・企業誘致の3つを産業振興の大きな柱として位置づけています。行政と県内の中小企業団体が目的を共有し、協力していくことが「日本一の中小企業ベンチャー立県」の実現につながるものと考えております。またこのことは、条例にも謳(うた)われているところでもあります。

 「社長の学校」を掲げている埼玉同友会は、私もさまざまな機会に参加させていただいておりますが、本当に勉強する会であると感じています。今後は(事務局の移転により)同じ屋根の下となりますので、これからもお力を貸していただきたいと思います。

【コーディネーターから】地域の期待にこたえる企業づくりを

中同協専務幹事 国吉 昌晴氏

 本日のディスカッションで、埼玉県の行政・議会の皆さんが中小企業・地域産業について情熱を持って取り組んで頂いていることを強く感じることができました。

 われわれ中小企業家は、まず地域で雇用を生み出していくという形で、しっかりこたえていきたいと思います。そのためには、働く者にとって魅力ある職場を作ることです。同友会で学び、切磋琢磨(せっさたくま)することで、本業をレベルアップするとともに、新しい市場作りに挑戦してまいりましょう。そして例会で学び、経営指針をつくり、地域社会の期待に高い水準でこたえられる企業づくりを目指しましょう。

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