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【11.12.06】八尾市振興条例の改定の意義と同友会八尾支部の果たした役割〜大阪同友会八尾支部長 藤原義春氏((株)藤原電子工業社長)

条例制定から10年―成果と課題

 2001年に八尾市中小企業地域経済振興基本条例が制定されて、その後の変化を紹介します。

 まず、八尾サポートセンターができました。初代所長が中小企業への熱意が高いく、アドバイザーの先生も熱心に動きました。サポートセンターは振興条例実現の原動力となりました。1社1社の企業を訪問して技術や商品開発、さまざまなアドバイスをして回りました。また、異業種交流会としてマテック八尾や八尾バリテク研究会、レーザー研究会が結成されました。

 しかし、これらの活動に参加できていない企業は振興条例の内容を知らないということ。各団体も制定されてからは条例を検証していないという課題がでてきました。 そして、10年経つと、条例に対する八尾市の見方も変わってきました。サポートセンターが八尾商工会議所の傘下に移管され、アドバイザーが動くと経費がかかると動きを制限されるなど問題もでてきました。また、八尾市の地デジ化におけるテレビの発注において、地元企業ではなく、大手企業に発注する事例がありました。これは地元の経済循環や振興条例をどう考えるかということが問われていると思います。地元の企業に仕事が回れば、地域内循環の波及効果が大きく、税収にも反映するという考えにならなかったのかと思いました。

八尾市振興条例の改定とその意義

 そういった条例制定後の課題が明らかとなると、産業振興会議に参加しているメンバーは、「条例が弱まっている、もっと強化しなければならない」と、八尾市第5次総合計画にもとづく地域作りを議論する中で、条例を改定することになりました。

 今回の条例改定ではまず前文をつけました。ここでは、第1に「産業はまちづくりの根幹であり、本市の産業を支える中小企業は地域社会の活力の源泉である」と中小企業の重要な役割を定義しました。

 第2に、「八尾のまちが住みたい街、暮らしたい街として輝きを増し続けるため、市民、事業者及び市は、中小企業がこのまちで発展し続けるとともに、そこに働く人々が生きがいと働きがいを得ることができるよう、相互理解と信頼のもと、協働する必要がある」という理念を掲げました。ここでは、同友会理念を背景に主張しました。「生きがい」「働きがい」が消されるのではないかと心配しましたが、結果的に残りました。

 第1条の「目的」には、「市民、事業者及び市がそれぞれの立場及び役割について相互理解を深めることによって、健全で調和のとれた地域社会の発展に寄与することを目的とする」という文言を入れました。

 八尾市では住工混在問題が顕著です。例えば、廃業して貸し工場が空くと貸主は売ってしまいマンションが工場地帯に増えてくる。そのうち、マンション住民から工場が文句を言われて出ていかなくてはならなくなるケースも生まれます。

 そういう時、この第1条は八尾市が不動産業者を指導する根拠の1つになります。市が不動産業者と話し合い、住民に対して「工場の騒音も振動もあるかもしれない」と不動産業者が入居者に理解を求めるよう促すことが期待されます。

 第5条の「市の責務」には、「財政上の措置…に努めるもの」とすると入れました。これは、サポートセンターを商工会議所まかせにしないで、市の財政的措置を明記しておくことで、アドバイザーの先生方が動く財政的措置を要求できると考えています。

 第3は、条例の中に産業振興会議の定義付け行い、本条例が正しく運用されているかを検証していく事が明記されています。常に市民参加の街づくりを目指していくことに繋がります。

新しい産業を自分たちで創る

 当社は台湾の会社もやっており、いろいろ情報が入ってきます。例えば、国内で3500万円する機械を、日本の大手機械メーカーは海外では3分の1以下の1000万円で売っています。海外の安い人件費と材料費でやっているところに勝てるわけがありません。 八尾に残った中小企業が何をするのか。新しい産業を自分たちで創るほかありません。八尾に存在する4000社で大企業に負けないものづくりに取り組む必要があると思います。

 これからの生き方、生き残り方を真剣に検討するためには、中小企業が自覚を持たなければできませんし、条例の議論の中心にすわっていなければなりません。それは、同友会理念を中心にすえた議論でいっそう深まり、単なる異業種交流会ではできない、理念がすわっている同友会だからこそできると思います。

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