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【11.12.06】東日本大震災からの復興の課題と中小企業憲章〜中同協・中小企業憲章・条例推進本部副本部長 杉村征郎氏

 11月9〜10日の第17回中小企業憲章・条例推進本部・政策委員会合同会議より、杉村征郎氏・中同協憲章・条例推進本部副本部長の特別報告の要旨、藤原義春氏・大阪同友会八尾支部長の事例報告の要旨を紹介します。

企業経営のすべての前提

 リーマン・ショックと東日本大震災・原発事故。2つの歴史的危機を乗り越えることが私たちの直面する諸問題のすべての前提となると考えます。

 8か月がたち、被災地では、グローバルな大企業が速やかな復興をとげる一方で、ローカルな中小企業は様々な問題を抱え、たちすくんでいます。日本中のいたるところで中小企業を軸とする地域経済が後退しているからです。10月と11月の2度の被災地訪問・懇談で、決して被災地が孤立しているのではなく、全国の同友会員は連帯の絆で見守っていますという明確なメッセージを伝え、同時に新しい社会をつくり直す大きな転換点としなけらばならないと、私は強い想いで参加しました。

憲章を検証する

 訪問の目的は、1つ目に被災県の会員たちの企業再生への姿、復興へ障害などの生の声を聞くこと。2つ目は支援の具体的要望や問題点を把握し、同友会としてできること、政府への要望・提言にまとめること。3つ目は「中小企業憲章」が効力を発揮しているか検証しつつ、「中小企業の見地から展望する日本経済ビジョン」の学習・討論をすすめる出発点とすることにありました。

立ち向かう同友会の仲間

 建設、水産、サービス関連の宮城・岩手の20名のリーダーと懇談しました。

○何もない状況の中、瓦礫撤去や救援活動に全力。お客様からの「壊れた家をなんとかしてほしい」との相談・注文が殺到。職人不足でままならない。
○瓦礫処理や仮設住宅建設は、大手企業に丸投げで仕事が流れていく。「憲章の精神でやってくれ」と異議申立て一部変更前進した。
○二重ローン問題。財務が5年間健全、先の見えるとされた企業のみ債権を買い取り、多くの中小企業が切り捨てられる危惧。
○港の地盤沈下と建設規制。今も変わっていない。

 このような中でも、同友会会員企業は、地域がなくなってしまうと、雇用を守り、社員と共に同友会の旗印をたて頑張っています。 全国の仲間の絆と支援を期待しながら。

原発被害に立ちすくむ福島の仲間たち

 福島の状況には大きなショックを受けました。復興の足音が聞こえる三陸沿岸と違い、放射能汚染に長期にむきあわねばならず、しかも、人口の多くが他県へ避難した郷里に、企業という木々を育てていくにはどうしたらいいのだろうと感じました。

○「電力が大事なのか、それとも子供たちの未来、命が大事なのか。人の暮らしをこんなにも簡単に根底から変えてしまう原発をどうしても考えなおしてほしい」の声もありました。
○県地方振興局長や南相馬市長は、両者とも「脱原発を基本理念による復興」「我々の経験を絶対に無駄にしてほしくない」という言葉が印象的でした。

 このような中でも、同友会では、東電補償請求の一方的で面倒な仕組みを理解して適正な賠償を請求する個別相談会にも取り組んだり、いわき地区では新しい仕事づくりに取り組む懇談会、「除染」に注目して地域連携で事業化する構想も聞きました。

大企業偏重の「新成長戦略」か、国民総幸福の経済ビジョンか

 昨年6月に7年余りの私たちの運動が政府を動かし、中小企業憲章が制定されました。しかし同時に大企業偏重の「新成長戦略」も閣議決定されました。

 東日本大震災・原発事故の復興策では、憲章の精神が生かされていないとの声を聞き、また全国各地の中小企業も、リーマン・ショック、大震災の影響、急激な円高など、次々におこる事態に苦慮しています。そう考えると憲章の理念の実効は後退しています。

 そこで、中小企業振興基本条例の進展と憲章の真の実現のために、私たちは何をなし、何ができるのでしょうか?まずは「日本経済ビジョン」の学習・討論です。「生きる・暮らしを守る・人間らしく生きる」を実現し、新しい仕事づくり、「国民一人ひとりを大切にする豊かな国づくり」の実現を提案しています。 また中同協の本年度活動方針、同友会3つの目的を総合的に、各同友会で実践し、早期に5万名同友会をつくりましょう。

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