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【13.04.24】条例制定のその後ー北海道・釧路市中小企業基本条例施行から4年

高木亨・前釧路市産業振興部次長に聞く

 2009年4月に釧路市中小企業基本条例が施行されてから4年。条例はどのように釧路の中小企業振興につながっているのでしょうか。北海道同友会釧路支部(会員数473社、対企業組織率14%)を訪ねて、高木亨・釧路市産業振興部次長(役職は2月当時)に話を聞きました。

取材・執筆 中同協事務局長 平田美穂

Q 釧路市中小企業基本条例の特徴はどのようなものですか。

A 釧路市中小企業基本条例は、2008年に釧路商工会議所と北海道中小企業家同友会釧路支部の連名で釧路市長に対して「中小企業振興基本条例」の制定の要望がなされたことを契機に、市長が釧路市商工業等振興審議会に諮問するなどして制定されたものです。

 他の地域の条例と構成は変わりませんが、消費者である「市民の役割」も明確にして、基本理念の中に、「産消協働」の考え方を取り入れている点で、他の地域の条例とは異なります。産消協働には「域内循環」「域外貨獲得」「域内連携」の3本の柱があります。釧路の中小企業者を産消協働の理念に基づいて地域ぐるみ強め、その結果地域経済活性化を図るということです。

Q 「産消協働」とその取り組みはどのようなものでしょうか。

A 釧路経済では域内循環が少ないことが課題です。ですから地産地消を更にバージョンアップさせて、ありとあらゆるところで地元のものを回転させることで「域内循環」となり、そして域外からの財を獲得していくことで経済の活性化を図るというものです。これら財の域内における循環と域外からの獲得は、地域経済活性化のために不可欠な車の両輪です。そしてこの経済活動を進めるために中核としての役割を果たすのが中小企業であると条例の前文に明確に謳(うた)われています。

 具体的には、昨年11月から「元気創造枠−域内循環推進啓発認定事業」として、条例の基本理念に賛同し、域内循環への取り組みを実施、または実施しようとしている中小企業者を募集し、「域内循環推進宣言」を審査の上、取材し、3月末までに37社をホームページで紹介しています。

 同友会会員企業の皆さんが積極的に応募して、「地域を担う人材の育成に積極的に取り組む」「物品の調達に際しては域内の中小企業から購入する」「会社間取引は域内の中小企業との取引を最優先する」など各社各様に宣言しておられ、頼もしいです。

 自分の特技を生かしマンガを市のホームページに掲載して、市民のみなさんにも条例を理解してもらおうとしてきましたが、「域内循環推進宣言制度」を通じて、市民のみなさんにもこのような企業があることを知ってもらい、地元のもの地元の企業から積極的に買ってもらうよう啓蒙(けいもう)していきます。

Q 条例ができてから具体的になるまでにずいぶん時間がかかるものですね。

A 条例は理念ですから、それを行政として方針化して計画的に遂行するまでには、時間がかかります。現状把握から方向性を出し、具体化していくための枠組みが必要です。

 これまで地域経済の具体的振興策を検討する「中小企業円卓会議」や地域経済分析を行う「地域経済推進力研究事業」を行い、今年度から「総合政策部」として市全体でこの「域内循環」に取り組みます。

 条例ができても、具体化していく枠組みがなければ、実際に中小企業の振興をはかることはできないと思います。

 貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

釧路市中小企業基本条例 前文

 釧路市は、雄大な湿原、神秘の湖、深奥な森林を抱えた日本有数の自然の中にありながら、古くから「くすり場所」として交易の拠点となり、経済的にも重要な位置にあった。

 かつて幕末の探検家松浦武四郎はくすり場所を訪れたとき、「東蝦夷地第一の都会たるべし」と将来の経済的な発展を予見した。以来100年有余の間に、武四郎の言葉どおり、釧路市は幾多の先人たちが重ねた労苦を礎として、都市規模を拡大し様々な産業を根付かせ、まちに灯りをともしてきた。

 釧路市は事業所のほとんどを中小企業が占めるまちであり、中小企業は、雇用の主たる受け皿であるばかりでなく、その迅速な経営判断と行動力をもって域内に財を循環させる働き手として、すぐれた素材と技術をもって優位性のあるサービスを生み出すことで域外から貨幣を運んでくる稼ぎ手として、地元の人材を育成し、様々な団体と連携して地元を育てるまちづくりの担い手として、地域情報の送り手として、地域経済活性化の中核的な役割を担っている。

 一方、市民は、消費者として直接間接に中小企業の顧客となり経済循環の一翼を担っており、中小企業と互恵関係にある経済主体であるととらえることができる。

 そこで、域内経済の状況に等しく影響を受ける企業と市民と行政が、地元への愛着と郷土への誇りを胸に、地域経済活性化の核である中小企業の振興のための役割を分担しつつ様々に連携し、その結果として財とサービスを生み、域内に循環させるとともに域外からの財を獲得し、高齢者が安心して暮らせ、若者が挑戦する機会に満ちたまちとなるよう、釧路市がひとつとなって、先人が築いた礎に我々と我々の子孫の努力をさらに重ねながら釧路市を幾世代にもわたって引き継ぎ、発展させるべく、基本的な理念と方向性を示すため、この条例を制定する。

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