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【16.02.17】広がる中小企業憲章の精神〜各地で条例制定の動き活発

 全国で39道府県、151市区町(2015年12月28日現在)の自治体で中小企業振興基本条例が制定されています。

 中小企業憲章の精神を地域に広げるため各同友会で条例制定に向けた活動が取りくまれています。福岡、沖縄の条例制定への取り組みを紹介します。

福岡県の中小企業振興条例―福岡同友会 代表理事 中山英敬【福岡】

 福岡同友会では2008年度に中小企業憲章推進本部が設置され、私は当初より本部委員としてこの運動に積極的にかかわり、翌年から本部長としてこの運動を推進しています。中小企業憲章の制定や各地においての中小企業振興基本条例の制定・見直し運動は、会員にとってとても難しい課題でした。その当時の福岡県には、3市1町(福岡市・大牟田市・筑後市・志免町)に政策条例の事例はありましたが、私たちがめざす理念型条例の事例は、県をはじめ県内の市町村には存在しませんでした。そんな中で会内学習から取り組み、行政との懇談会や勉強会とつなげていきました。2010年6月に中小企業憲章が閣議決定され、全国各地での中小企業振興基本条例の制定・見直し運動は加速し、先進事例として多くの新鮮な学びをいただきました。

 福岡県内初の理念型条例として、2012年10月に直方市で中小企業振興条例が制定され注目を浴びました。同友会がかかわり、他団体や研究機関を巻き込み、行政も一緒に全国の先進事例などを学び、条例の中で振興審議会を位置付け、産業振興ビジョンが策定され、計画から実行へと変革に向かって動き出しています。

 続いて北九州市では、北九州地区の地域政策部を中心に行政と学識者を含め勉強会を重ね関係を深めてきました。2014年の8月の議会で4団体に参考人招致があり、自民党議員から提案された条例案に関する意見収集が行われました。同友会からも積極的に発言し、特に振興会議設置の重要性を訴えました。一部こちらの要望も反映され、12月議会で可決・成立しました。各政党を訪問して意見交換したり、北九州市の協議会などに参加し意見を述べたり、北九州地区会を中心に、条例を生かす体制づくりに力を注いでいます。

 田川市や飯塚市も動きだしました。田川市とは、毎年6月推進月間の大勉強会をとおして関係が深まり、個別の勉強会などで計画を立てすすめてきました。今年9月の議会で制定され、その条例により産業振興会議がスタートします。産業振興会議に参画予定の中小企業団体などの代表者による勉強会も重ねてきました。昨年11月に京都大学の岡田先生に来ていただき勉強会の総仕上げをしました。また、田川支部設立準備会も立ち上がり、条例の活用と支部づくりが並行して動いています。

 昨年10月には、念願だった福岡県に中小企業振興条例が制定されました。毎年行ってきた知事への政策要望の提言の中で、重点課題として条例制定を訴えてきました。昨春行われた地方選挙で選挙公約の最初に条例制定が掲げられ、当選後の10月に議会で制定されました。行政主導で県内の中小企業の経営の実態調査が行われ、中小企業振興条例の骨子案が策定され、中小企業対策審議会で意見収集が行われました。同友会からも評価する点と要望事項を発言し、一部反映されるものとなりました。

 このように、ようやく福岡県も県を中心に県内各市町村でも中小企業振興基本条例制定に向けた動きが加速しています。条例の制定はゴールではなく、中小企業振興のスタートです。われわれがこの運動の先頭に立って、企業づくりと地域づくりを進めていきます。

町で初の条例制定―沖縄・南風原(はえばる)町が制定【沖縄】

 沖縄県には41市町村(11市11町19村)があり、中小企業振興基本条例は、これまで6市で制定されています。昨年12月に南風原町(はえばるちょう)において、県内の町としては初の「南風原町中小企業・小規模企業振興基本条例」が制定されました。

 南風原町は、県都・那覇市に隣接する町で、人口は現在、約3万7000人です。南風原町の中小企業振興基本条例制定のきっかけは、2012年に南風原町で開催された障害者の「雇用・就労支援フォーラム」(主催:沖縄同友会健障者委員会、共催:南風原町)に町長が参加してからです。

 2014年には、条例の勉強会が町の担当課の主催で開かれ、その後検討会が発足して制定に向けての作業が進みました。14年11月には、沖縄同友会の経営研究集会の条例分科会に課長と担当者が参加して、全国の事例を行政が積極的に学ぶ中で、条文案の検討がなされました。検討会には、同友会をはじめ商工会、地域の農業団体(JA)や伝統工芸組合も含めて中小企業・団体が参加しました。当初、2015年9月の制定をめざしていましたが、前文の再検討などもあり、12月議会での制定になりました。

 条例の特徴は、第1に、これまであった「南風原町商工業振興条例」を廃止して、中小企業振興基本条例に一本化したことです。第2に、第2条の中小企業関係団体の中に、商工会、中小企業団体中央会と同列で中小企業家同友会が明記されたことです。第3に、第十条に学校の役割として、中小企業への理解を深めることと、勤労観、職業観の形成など、人材の育成に努めることを明記しています。第4に、沖縄のこれまで制定された条例には明記されていない「中小企業・小規模企業振興審議会」を設置したことです。第5に、条例制定と同時に、「中小企業現状調査分析事業」を実施し、南風原町にある中小企業の現状・課題・要望などを把握し、中小企業振興施策に生かすことにしていることです。

 条例制定には、同友会南部支部の役員をはじめ、同友会会員が大きな役割を果たしました。生きた条例にするためにも引き続き積極的に参画することにしています。

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