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【16.05.11】同友会だからこそできる振興条例の推進〜科学と情熱と思い〜【奈良】

 奈良同友会が主催して2月9〜10日に行われた「松山市・東温市中小企業振興基本条例制定と推進に学ぶ視察研修会」に参加しました。

 松山市と東温市の振興条例の特徴は、慶應義塾大学経済学部の植田浩史教授が提唱する「実態調査・振興条例・円卓会議」を条例づくり3つの定石として位置付け、愛媛同友会が制定のプロデュース機能を担い推進していることです。

 そこで、条例制定後の取り組みを学ぶと共に、3つの定石を打つことができれば(それだけでも高いハードルですが)、地域振興は普遍的に前進するものなのかを検証するという思いで、研修会に臨みました。

 東温市では、山本健吾市産業創出課 課長補佐の「条例前文にある文言を市の総合計画に盛り込んでいます。これは、市の中小企業振興による地域づくりへの強い思いの表明」「5年ごとに実態調査をして、東温市の調査を全国の基準にしたい」という報告に、行政マンの強い思いを実感。この思いの源泉は、条例制定前1年間にわたる学習活動の積み重ねと、同友会リーダーの情熱。「戦略や手順だけでは、条例はできても推進はできない」(米田順哉愛媛同友会副専務理事)「人を生かす経営の実践と、情熱・戦略・行動が問われる」(鎌田哲雄愛媛同友会専務理事)のです。

 松山市では三好貫太市産業部地域支援課主幹より、民間主導の円卓会議と、そのもとでの3つの専門部会の実践が紹介されました。愛媛同友会は「人育ち応援部会」を担い、キャリア教育で培った経験をいかして、小学校高学年向けの教材「未来デザインゲーム」を開発。4月から学校教育の現場で活用されます。

 松山市の円卓会議座長の和田寿博愛媛大学教授は「理念と人間関係による結びつき、科学と情熱と“何とかせなアカン”という思いでがんばっている」と強調。「条例運動はわが社の本業そのもの」と断言する米田順哉愛媛同友会副専務理事、愛媛の食文化を全国に発信する田中正志愛媛同友会代表理事の経営実践にも学び、振興条例制定と推進は、企業づくり運動をベースにした人が生きる地域づくり運動と一体となってこそ本領を発揮するということを学んだ2日間でした。

滋賀同友会専務理事 廣瀬 元行

視察研修会に参加しての感想

人を生かす経営こそが条例制定運動の鍵という学び

西村博史会計事務所 所長 奈良同友会政策委員長 西村 博史

 私が、今回の学びで得たことは、中小企業家同友会の理念と条例制定運動は不即不離の一体のものであるという事です。

 人は「信じるに足りる存在である」と、鎌田専務理事は述べておられます。その「信じるに足りる」中小企業を地域に1社でも多くつくることが、すなわち条例制定運動そのものです。つまり、私たちが「信じるに足りる」「憧れの」中小企業であるかどうかを問われる運動が条例制定運動であると言えます。

 地域で「信じるに足りる」「憧れの」中小企業になるためには、人を生かす経営をめざし実践している企業であるかどうかという点を欠かすことができません。人を生かす経営と異なる道を行く中小企業が「憧れ」の存在になれるはずがありません。「条例・実態調査・振興会議」が条例制定活動の定石であるとすれば、人を生かす経営の実践はそれなくしては動かない「鍵」であり運動のエネルギーそのものです。

 「できちゃった条例」が動かないのは、そこに中小企業家の魂が込められていないからです。人を生かす経営にかける思いこそが、魂そのものです。私たち奈良同友会が、この観点から振興条例制定の運動を位置づけることができるかどうか、それが今後の事の成否を決定づけるのではないかと思っています。

 今回、奈良県広陵町役場の方々、広陵町商工会東会長にも同行いただきました。東会長は松山市の学習会を通して「今まで地域の事は国や県がなんとかしてくれると思っていましたが、愛媛に来て自分たちがやらなければならないことに気づきました。今までのぬるま湯のような活動を改めるべきであると痛感しました」と話されていました。参加者すべてがその思いを共感できたのではないでしょうか。

 愛媛同友会は、間違いなく全国同友会の先頭を走る条例制定運動を展開しています。今後も私たちのベンチマークとして仰ぎ、ともに活動をしていきたいと思います。きめ細かな行き届いたおもてなしは、感動的で、同友会理念に忠実に運動を進めてきた積み重ねの成果であると感じました。

 同友会理念にそった活動という基本の姿を学ぶ旅をさせていただきました。

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